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分 類:小名狂言 二人冠者物
登場人物:次郎冠者(シテ)、太郎冠者、主
※和泉流では、棒で縛られるシテの方が太郎冠者。
あらすじ
いつも自分の留守の間に、太郎冠者と次郎冠者が酒を盗み飲みしていることを知った主は、今日こそは戒めようと考えます。そこで、少しは賢い主は、先に太郎冠者と共謀して、棒術を見せるようにと次郎冠者を誘い出します。

主は、『夜の棒』という隠し技を見せるように次郎冠者に命じます。次郎冠者は、調子に乗って『夜の棒』を披露しますが、その棒を両肩に掛けているところを、主と太郎冠者にがっしと抱え込められ、手首を棒に結わえられ、正しく“棒縛”状態にされてしまいます。

縛られた次郎冠者のなれを笑っていた太郎冠者ですが、結局は油断していた所を主に、後手に縛られてしまいます。

「こんな格好で、お留守が出来ましょうか」という二人の声を後目に、主人は安心して出かけてゆきます。(橋掛リに座ることで、一旦主は、舞台の進行上から消えたことになります)

さて、残された二人ですが、酒を盗み飲みするから縛られたのだろうと判ると、反抗心からか、かえって酒を飲みたくなります。そこで、棒縛にされていても手首の動くことに気づいた次郎冠者は、手始めに酒蔵の扉を開け、一つの酒壷の覆いを取りのけます。

酒を汲んだ次郎冠者は、さっそく飲もうとしますがこぼれるばかり・・・。「ああ、もったいない」とは太郎冠者のことば。

しかたなしに、太郎冠者に酒を飲ませます。うまい酒です。

何とかして自分でも飲みたい次郎冠者。そこで、自分の手首も動くことに気が付いた太郎冠者が、後手に盃をもって次郎冠者に酒を飲ませることにします。(労働者は団結せよ!?)

酒を飲むことができる・・・そう判ってしまえば、もうこっちのもの。留守は、自然酒宴へと移行します。♪「ざざんざ〜、浜松の音は、ざざんざ〜」などと謡い出すは、縛られながらも舞を舞うは、すっかりいい気分。

いっぽう用が済んで帰ってきた主は、またもや酒盛りをしている二人を見つけて、驚かす効果的な手段はないものかと考えます。そこでうしろから盃をのぞき込み、自分の姿を写そうとするのですが・・・。

その姿を見た二人は、酒を飲まれはしないかという主の“執心”が写ったものであろうと逆に面白がり、苦々しい面付きだとけなしたあげくに謡までうたいだす始末。

結局、主の怒りが爆発。最後は、『追い込み』というパターン通り、次郎冠者を主が追い込んで終わりますが、別の演出では、逆に次郎冠者が“夜の棒”で、逃げる主人を追い込むという、独特のものもあります。

みどころ
次郎冠者の“棒縛”状態と、太郎冠者の“後手”状態ながら、それでもやっぱり酒が飲めちゃう陽気な曲。興に乗っての縛られたままでの舞も、正しく『その縛られた体が面白い』と言えます。
最後の場面での謡について。次郎冠者が太郎冠者に「謡うたならば心得るであろう」と言い、そのとおり一緒に謡い出します。
♪ 月は一つ 影は二つ みつ(三つ・満つ)潮の 夜の盃に しゅ(主・酒)を乗せて 主とも思わぬ 内の者かな
実は、この謡は能『松風』の替え謡なのですが、しかし観客である私達の大部分にとっては、それは全然「心得」ていないことです。ものまねや声帯模写がそうであるように、パロディーというのは、その元の情報をしっていてこそ面白いものです。通じなくなったパロディーであっても、別なもので代えるわけにはいかない伝統芸能の一面があらわれています。最後に『松風』の該当する謡の部分を紹介します。
♪ 月は一つ 影は二つ 満つ潮の 夜の車に 月をのせて 憂しとも思わぬ 潮路かなや
文:湯田拓也
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