花 子(はなご)

 

分  類:極重習

登場人物:男(シテ)、妻、太郎冠者


 あらすじ

 京都の吉田に住む男は、かつて美濃国野上の宿で契りを交わした女を北白川に囲う。 ところが妻の目が厳しいのでなかなか会いに行く事ができない。 一計を案じ、一夜の座禅を妻から勝ち取る。妻には座禅をしている所を絶対に 見るなというが、念のために太郎冠者に座禅衾をかぶせ、自分は花子の所へ行く。
 そうとは知らない妻は、我慢できずに座禅をしている夫の所へ行くが、 太郎冠者と知って激怒する。そして太郎冠者の代わりに座禅衾を被り、夫の帰りを待つ。
 朝になり、そうとは知らない男は、座禅衾を被った太郎冠者の労をねぎらい、 花子との一夜を語る。そして太郎冠者の衾をとるが、妻だったので驚き逃げてゆく。

 みどころ

 のろけ話を聞かされます。しかも不倫のです。あなたが現に不倫中であったり、 二股をかけていたりするならば、見ない方が良いでしょう。 そうでないのなら、うらやましく聞いていて下さい。と言っても、 のろけ話は小歌の節にのせて歌うので、何言ってるか分からないかもしれません。 ですが、不倫ののろけ話という事を知っていれば、 なんとなく分かると思います。
 言っておきますが、きわどい事はいいませんよ。 そんなことを期待してはいけません。
 それにしても、太郎冠者はとんだ迷惑ですね。 しかしこれも彼の定めなのです。堪えなくてはいけません。

 うんちく

 まず、この狂言はとても重い習いになっています。 なにしろ三十分ばかり謡いっぱなしのうえ、 色気を出さないといけません。 不倫の話ですので男の色気ですね。 上手に演ずるよりも、この色気をいかに出すかが 曲の流れを大きく左右します。 三十分も謡通しですので、それだけの体力も入ります。 そのあたりが重い習いになる理由です。 そして歌舞伎舞踊「身替座禅」へと変化してゆきます。

 また、この狂言には他の狂言にはない、面白い事実があります。 舞台には登場しませんが、不倫相手は花子といって、 美濃国野上宿で出合ったと言っています。 おまけに吉田に住んでいるという事です。 実はこの二人の馴れ初めは、能「班女」に描かれているのです。 能では花子は遊女で、男の子とが忘れられずぼーっとしているので、 主に追い出され、京都の糺の森で男と再会するというものです。
 狂言「花子」では二人の不倫は順調に行っているようですが、 この後、悲劇が訪れます。 せっかく二人の間にできた子を人買いに連れ去られてしまうのです。 花子は東国まで子供を捜しに行き、ついに子供と再会するのですが、 すでにこの世のものではなかったのです。 この悲劇については能「隅田川」に描かれています。
 このように、花子は能楽の世界では数奇な運命をたどる事になるのです。

文:佐渡のきつね

 

 公演情報

 


「狂言演目紹介」冒頭ページに戻る

トップページに戻る