『新作絵入狂言記』紹介
収録作品
@鬼の目にも涙
昭和48年9月2日 第二回双の会 大槻能楽堂
劇作家榊原政常氏の作品に『親子雷』というのがある。親子の雷が落ちた際、子は角を折り天上出来なくなるが、所の長者が養子を求めているのに乗じて、子雷をうまうまと養子に入り込ませる話。「虎明本」の『眉目吉(みめよし)』をアレンジして、親子の別れに重点を置いてみた。
A筵八幡
昭和52年11月4日 第六回双の会 大槻能楽堂
昭和58年3月28日 寝屋川親子劇場 寝屋川市立総合センター
貧乏神をわが家から追い出そうとする男が、追い出す寸前に貧乏神に得難い友情を感じ、富裕よりも友情を取るという話。中世の「沙石集」中の話にヒントを得た作で、「万葉集」山上憶良の『貧窮問答』を小唄節で舞う所が中心。
B天河詣で
昭和56年7月7日 天川弁財天社夏大祭 弁財天社能舞台〜平成元年7月20日 天川弁財天社正遷宮 弁財天社能舞台
奈良県吉野郡天川村に鎮座の天河弁財天社の60年毎の秘仏御本尊御開帳の際に作った作品。「天正本」の『竹生島参(ちくぶしまもうで)』から素材を得た脇狂言。
C冥土行
昭和56年11月6日 第十回双の会 大阪能楽会館
昭和57年10月13日 大和座
仮死した男が冥府で、自己の死亡無記載を閻魔帳で確かめ蘇生する間の話。古典落語『地獄八景』を参考に、自己の死亡無入り・三途の川の渡し・地獄見物の舞などに工夫がある。
D鈍根宿
昭和57年11月5日 第一回翔の会 大阪能楽会館
大蔵流一六代家元虎清が、虎明の弟清虎に口述筆記させた「虎清本」の中に、『鈍根草』という狂言がある。それに古典落語の『茗荷宿』を参考にして、「茗荷を食えば、馬鹿になる。」という俗信をテーマーにして創った。
E聖ばかし
昭和58年11月4日 第二回翔の会 大槻能楽堂
「宇治拾遺物語」巻第八の六『猟師仏を射る事』からヒントを得ている。
狸が腹鼓を打つ所作や、一言も台詞を言わないシテの登場は、既成の狂言には無い。
F唐音
昭和60年7月27日 坂本欣司氏追悼能会 大槻能楽堂
昭和62年11月6日 第六回翔の会 大槻能楽堂
博打ですっからかんになった二人の男の思案は、他力本願の易流行にかこつけ、土地の者に知られぬ方を唐土から流れ着いた有名な易者に仕立て、一稼ぎを企む。俄かに唐国語は言いたい言葉を逆に言う事にするが、なかなか金儲けも大変な事。一時は旨く行くと思われたが、通訳の男の方が欲をだしたばかりにもとの木阿弥という話。
G呆れ俊寛
昭和60年11月9日 第四回翔の会 大槻能楽堂
俊寛も後数年我慢をすれば……、という想いを籠めて俊寛に贈る鎮魂の狂言。前後二つのお話は、実に夢幻の様な変な話という所から「複式夢幻狂言」と名付ける。京都八坂神社の祇園田楽は、例年祇園祭で見られる物。
H爺馬鹿
昭和61年11月7日 第五回翔の会 大槻能楽堂
勿論「親馬鹿」を意識して書かれている。父や母になる時と、爺や婆になる時とでは、人間関係の複雑さに格段の違いがある。自らの環境や状況がどうであれ、美しいものは美しく、可愛いものは可愛い。複雑なものを捨てて、単純になれない頑固さは、本人の苦悩とは別に、横から見ていて微笑ましい。既成の狂言に無いテーマを寸描してみた。懐かしい人間像が舞台に浮かび上がれば……と思う作品。
I二人死神
昭和62年11月6日 第六回翔の会 大槻能楽堂
人間の寿命は年毎に高くなって行く。あの世では死神はノルマまで課せられて大恐慌。今日も死神達は死んでもよい者を求めて、町を彷徨い歩く。そこへ5億の不渡りを出して、倒産寸前の社長がやって来る。自分の命を縮めても、社員とその家族は助けたいと思案しながら……。死神に取っては涎のこぼれそうなお客さん。『平家物語』『閑吟集』『松の葉』などを、謡物や舞い物にした、現代的世話物狂言。
J蓬莱の福鬼
平成元年11月2日 天川弁財天社秋大祭 弁財天社能舞台
東海の蓬莱の島から福鬼の一族がやって来て、所の氏神を祝い称え、氏神と共に一時を送り、その後、島の宝物を善男善女に撒布して、蓬莱の島に帰って行く歌舞劇。京都八坂神社では毎年節分祭に、民俗芸能として演じているものを狂言化した作品。
K売声
平成3年11月8日 第十四翔の会 大槻能楽堂
懐かしい昔の売り声の笑い。新しい市場の棚順は先着順と決まっていて、自分の店の隣に、何を商売する店が来るかは、市場が開かれて見なければ解らない。この新市は一の棚に茶屋・二の棚に篩屋(フルイヤ)・場末の棚に古鉄買いが店開きをした。夜が明けて、いよいよ売り始めの第一声だが、困った事が起こってしまった。仲裁に出た目代がこの難問を如何に裁くか……。結果は名判決だと、この話は世間に広まり、新市は思わぬ事で有名になり大繁盛する。脇狂言。
それぞれ、台本の形式で書かれており、「鬼さんの絵師」井上孝博による挿絵入り。特別付録「新作雑記」がある。
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